熱光変換量子環境材料の創出
(環境、エネルギー分野)
趣旨と目標
本研究会は昨年度同じ名称で行った研究会を継続するものである。
研究代表者が新たに開発したX線原子軌道法XAO法をCeB6結晶に適用したところ、157℃で数eV上にある5d5/2G8軌道を電子が完全占有していることを発見した。その後の研究で5d軌道を電子が占有する現象は、他の希土類六ホウ化物でも起こっていることが明らかになったが、5d⇒4f遷移により発生すると考えられる紫外光を活用すれば、社会的にも重要な環境量子材料が誕生すると考えられる。現在、200℃以下の工場や家庭から排出される熱を有効に利用する手段はない。たとえば、200℃以下の廃熱を光に変え、太陽光発電の夜間光源として、また、水の電気分解の光源として利用できれば、その社会的貢献度は計り知れない。また、紫外線による自動車の廃棄ガスの浄化作用等も期待できるので、その用途は広い。現在、熱を光に変換する手段はない。その意味で本研究会で取り扱う希土類熱光変換材料は、全く新規な原理に基づく環境材料として、豊かな可能性を持つ。
提案する研究会では、この5d占有による5d-4f熱光変換材料としての基礎研究とともに、その企業化の可能性を追求する。そのため、PFにおける放射光実験、JPARCにおける中性子回折実験を行うとともにCeB6の5d,4f準位のエネルギー差の理論計算を行い、5d-4f遷移を理論・実験から詰める作業を行う。東北関東大震災により、前記2施設ともに大きな損害を受けており、再開の目処は立っていないが、本質的な部分の損害はおおきくないということなので、夏以後使用できると期待している。SmB6でも5d占有が認められることは昨年度に発表した。昨年度の研究会で分光がご専門の富岡上席研究員、金属物性物理がご専門の水谷上席研究員から、ご意見を伺った。外部摂動を与えない場合、前記発光を生起させることは難しいことが明白になった。電磁気的または熱的外部摂動が必要であるので、梅野上席研究員には、それらの実験をお願いすることにした。また、分光実験により発光を確認するため、産業技術総合研究所(中部センター)の吉村和記博士と共同研究を行う。また、これらの実験を実施するためには希土類ホウ化物単結晶が大量に必要になるので、産業技術総合研究所(つくば市)大谷茂樹博士に合成していただく。2博士とは共同研究契約を行った。今年度は新たにINAXと明電舎に参加いただく。企業の関係者には企業化に当たっての問題点等を検討していただくとともに、希土類熱光変換化合物を透明な媒体(ガラス)にドープする方法の検討を行っていただきたいと考えている。具体的には、研究会に参加する企業と協力して、NEDOの新エネルギーベンチャー技術革新事業等に応募して、フィージビリティスタディを行った後、本格的な研究開発ステージに展開する予定である。X線回折と分光の専門家、ホウ素化合物研究の専門家が、産官学の区別なく一同に会し、希土類熱光材料の創成に向けて、自由に2年間議論を行い、積極的な産官学共同の予算申請を行う場として、本研究会を活用する。
責任者
田中 清明 (名古屋産業科学研究所・上席研究員)
主要メンバー
藤沢 寿郎 (名産研研究部副研究部長)
富岡 秀雄 (名古屋産業科学研究所上席研究員)
水谷 宇一郎 (名古屋産業科学研究所上席研究員)
梅野 正義 (中部大学電子情報工学科客員教授・名古屋産業科学研究所上席研究員)
舘脇 洋 (名古屋市立大学大学院 システム自然科学研究科・教授)
竹中 康之 (北海道教育大学函館校・准教授)
籠宮 功 (名古屋工業大学工学研究科・准教授)
大谷 茂樹 (独立行政法人産業技術総合研究所ナノ物質ラボホウ化物グループリーダー(つくば市))
吉村 和記 (独立行政法人産業技術総合研究所サステナブルマテリアル研究部門環境応答機能薄膜研究グループ長)
鈴木 洋 ((株)TYK知的財産室室長)
野崎 哲 (鳴海製陶株式会社産業機材本部営業部商品開発課)
山嵜 悟 ((株)INAX総合技術研究所MOT推進部技術企画課課長)
坂野仁 美 (㈱明電舎基盤技術研究所開発企画部開発統括課)
その他
- 開催場所
- 名古屋市内(名古屋産業科学研究所他適宜)
- 実施形態
- 研究発表と意見交換の場として年2回実施
- 実施期間
- 平成23年4月1日~平成24年3月31日