本研究会は、平成18年度に設置された
「磁気プロトニクス研究会」が平成23年度まで継続し、平成24年度には「磁気バイオテクノロジー研究会」に改称、さらに
平成25年度から研究対象を拡大させた名称に変わったものである。これまで超低周波(ELF)磁界による水中の自由プロトン
発生源理(磁気プロトニクス原理)による生物生長促進効果を、主たる研究対象としてきたが、平成24年度には、新たに
コンクリートの高強度化(生物活性高強度コンクリート)効果が発見され、平成25年度からはコンクリートの水和化学反応等の
促進効果も研究対象に加わった。
平成25年度には、2回の研究会開催を軸に、メンバーの活動によって以下の画期的研究成果が得られた。
(1) 生物活性高強度コンクリートの開発研究:
1-1:本研究会の「生物活性高強度コンクリート」が、内閣府経済社会総合研究所の研究成果レポート:「回復力のある社会の
構築に求められる科学技術イノベーションに関する調査研究」研究会報告書(平成25年7月)附属資料「2030年の芽」No.73に掲載された。
1-2:NCC社が手練りでコンクリートの試験練りを実施し、粗骨材のELF磁界によってコンクリートの硬化が促進されることを実証した。
1-3:A社が、大阪のコンクリート試験機関に試験練りを委託し、コンクリートの圧縮強度および静弾性係数測定を行い、磁化骨材
による高強度・高曲げ強度コンクリートを実証した。
(2) 生物生長促進効果実験:
2-1:K社がO大学との共同研究で、「磁化石設置水槽での、クルマエビ稚エビの養殖実験」を4ヶ月実施し、生残率が磁化石設置水槽で
76.7%、対照水槽側で50.0%となった。
2-2:A社が、東京の肥糧検定機関に委託し、磁化石コンクリート板上で野菜の播種・LED栽培試験を実施した結果、3週間で4%の
成長促進効果となった。
研究会では、これまで11年間の生物生長実験を総括し、「ELF磁界による生物生長促進率が、1週間で1%(2年で100%)」を
判定基準とすることを検討している。
(3) 材料の加工技術:
3-1:磁性粉末造粒焼結球配列ゴム被覆ベルトがS社とM社によって開発された。本ELF磁化ベルトで、居眠り運転防止覚醒効果が顕著に
現れることが、名城大学で実証された。
3-2:弱磁性石を高温加熱で強磁性体化することが判明。
(4) その他:
・ 2013年12月5日、6日に名古屋大学での「アグリビジネスフェアin東海」で、本研究会からブース展示。
・ 1-3、2-2,3-2に関して、名古屋産業科学研究所内中部TLOを介して、特許出願が行われた。
目的
X線回折法で測定した電子密度を解析する方法は、大別すると、多極子解析法と研究代表者が新たに開発した
X線原子軌道法(XAO法)がある。多極子解析法は、電子密度を球面調和関数の一次結合で表現し、化学結合の
特性を論じる方法である。XAO法では、X線回折法では、原子軌道の形とAOを占有する電子数が求められる。
明らかに量子理論に直結する物理量が求められるXAO法が優れていると考えられる。しかしXAO法は希土類元素を
含む高周期元素化合物の電子密度の量子理論に基づく取り扱いを可能にするが、二つ以上の原子にまたがって
分布する多中心電子密度は説明できない。そのため多中心電子により形成される共有結合からなる有機分子を
取り扱えない。本研究会の目的のひとつは、X線回折実験から分子軌道(MO)を求める方法を確立し、X線回折法
により波動関数(位相抜き)を求める方法を一般化することである。
成果
XMO法では、軌道間の規格直交条件下で、既定関数の係数を求める最小二乗法の他に、物理的に意味の近い
基底関数間の相関を上手に捌く方法が必要であるのに気付き、この方法を開発した。この結果、(NHCHO)2の
分子軌道を決定した。N-H, C-H結合距離が中性子回折で求めた正しい値になるとともに、差フーリエ図に
あった共有結合による山がほぼ消えた。この成果を東大で開催された日本結晶学会で発表した。また、結果を
補強するために、11月にPFで超高精度測定を行った。変数間相関の多い場合の最小二乗法の取り扱いが確立
されたので、今後、タンパク結晶解析等の多変数結晶構造解析も可能になると考えられる。
研究発表および活動
a.X線分子軌道法(XAO法)による(NHCHO)2の分子軌道の決定、田中清明、和佐田裕子、日本結晶学会、2014年11月3日
b. 2014年11月 (NHCHO)2の回折強度測定、PF-BL14A、坂倉輝俊、田中清明
効率的な資源循環システムの構築は、持続可能社会の実現、
地球温暖化防止にむけて必須の課題である。この目的のためには、技術開発の推進だけでなく、地域の廃棄物を効率よく回収する
システムを地域と業界が一体となった体制で実施する必要がある。本研究会では、愛知県が具体的に進めているあいちエコタウン
事業でとりあげられたリサイクル技術と事業性の評価を行い、新たなリサイクル技術の可能性を提案し事業化に結びつけることを目的とする。
2013年度においては、環境省の「平成25年度地域の技術シーズを活用した再エネ・省エネ対策フィージビリティー調査」に、
本研究会から応募した「知多半島地域のニーズに即した地元発技術シーズを活用する再エネ導入に関するフィージビリティー調査」
が採択され、上席研究員等4名の研究会メンバーを派遣した。
この調査研究では、知多半島及びその周辺に技術シーズとニーズがある4種類の革新的な再生可能エネルギー利用技術
(①スーパーハイブリッド風力発電(3種類の双方向回転型風力発電機)、②マイクロ水力発電装置(一軸二重反転型水力双方向発電)、
③牛糞・竹粉燃料ボイラー、④乾式バイオガス・コジェネについて、技術シーズと地域の低炭素化ニーズのマッチング、事業採算性、
二酸化炭素削減効果などの調査を行った。
2014年度には、牛糞・竹粉燃料ボイラーに焦点を絞り、地域内及び地域を越えた普及、地域経済の活性化、雇用創出効果などに
範囲を広げて調査を継続する予定である。
愛知県幸田町より、バイオエネルギー開発調査業務の委託を受け、
芋メタン発電プロジェクト研究会を設置し、鈴木高広教授の研究実績をベースに検討を重ね、以下の報告書をとりまとめた。
資源循環型社会の確立が求められている中、本研究会は全国どこでも栽培でき、でん粉質で発酵原料に最適な芋を使い、
100世帯規模でも1世帯規模でも採算のとれる芋メタン発電の新技術を見出した。この新技術は、①芋の多収穫栽培技術と、
②芋発酵メタンから効率的に発電する技術の2つを開発することで、採算のとれる実用技術になる。③発酵残渣のリキッドフィード化を
加えれば、採算性はさらに向上する。 ① と②の採算性は、表1と図1に概略まとめられる。
表1 生食イモと燃料イモの併用生産事業モデルの試算例
図1 イモメタンガス事業20kWタイプ(農家戸別事業)の設備モデル
本研究会は、調査研究を踏まえ、バイオエネルギー事業推進のための以下を提言する。 (1) バイオエネルギー事業の振興に向け、芋生産に空中多層栽培システムを導入することが小規模農地における事業性とエネルギー作物市場開拓に有効な手段となる。 (2) バイオエネルギー事業は発展途上にあり、現段階では生食生産を併用し、格外品や蔓・葉をバイオガス用燃料用に出荷できる仕組みをつくることが求められる。 (3) 新たなエネルギー農業の普及には、多層栽培設備とバイオガス発電設備の新規開発が求められる。これを推進する装置・設備開発産業が、農村部の新産業分野として有望である。 (4) イモの空中栽培を基盤とするバイオエネルギー事業は、高度な技術力をもつ日本の新産業として、途上国を含め世界市場に展開できる有望なプラント開拓事業になろう。