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回折法と分光法の融合による新規発光材料の開発研究会

(環境、エネルギー分野)

趣旨と目標

本研究会は昨年度同じ名称で行った研究会を継続するものである。
研究代表者が新たに開発したX線原子軌道法XAO法で、X線回折法で測定した電子密度を解析することにより、原子軌道の形とAOを占有する電子数が求められるようになった。CeB6結晶に適用したところ、157℃で数eV上にある5d5/2G8軌道を電子が完全占有していることを発見した。レーザーで起こっている反転分布が実現されている。X線回折法で測定され電子配置であるので、これはCeB6の基底状態での電子配置であるが、何らかの外部摂動を加えれば、5d⇒4f遷移による発光が期待される。その後の研究で電子が5d軌道を占有する現象は、他の希土類六ホウ化物でも起こっていることが明らかになっている。
回折法と分光法は科学・工学を牽引してきた二大実験法である。回折法は分子構造を、分光法は分子のエネルギー状態を与えるが、両方法は互いに独立した情報を与える方法として発展しており、密接な接点はなかった。しかし、XAO解析により、回折法からAOの形と電子配置が求められるようになったため、上述の例で示すように、回折法と分光法を組み合わせて、新規発光物質を効率よく探索するという道が開かれた。
提案する研究会では、以下の研究を行う。

  1. 平成24年度には、XAOを、X線回折実験から分子軌道(MO)を求める方法へと発展させ、有機化合物の電子密度も解析できるようにほぼなった。これをさらに確実な方法へと発展させる。
  2. X線解析法では電子密度が測定されるので、電子密度の異方性と原子核の熱振動の異方性が、十分には分離できない。これはXAO解析においても、障害になる。一方、中性子回折法では原子核密度が測定されるので、正確な原子核の熱振動が求められる。したがって、中性子回折法で熱振動の異方性を示す原子変位変数(ADP)を正確に求め、これをXAO解析において既知変数とすることが出来れば、問題は解決できる。このX-N解析法の基礎研究を、J-PARCでの実験を主として行う。また、TOF-ND法では消衰効果の実験による補正が可能になると考えられるので、この方法の確立することにより、X線回折と同程度の精密な測定ができる中性子回折実験法の確立を目指す。
  3. 5d占有による5d-4f熱光変換材料としての発光研究を推進し、その企業化の可能性を追求する。発光のためには電磁気的または熱的外部摂動が必要であるが、平成12年度に、CeB6結晶のカソードルミネッセンスを測定したところ、17.7eVの紫外発光が観測された。ただし、結晶の質に問題があり、梅野上席研究員には、これを再確認していただく必要がある。これらの実験を実施するためには希土類ホウ化物単結晶が大量に必要になるので茨城大学理学部物理学科教授・伊賀文俊教授に合成していただいている。企業の関係者には企業化に当たっての問題点等を検討していただくとともに、希土類熱光変換化合物を透明な媒体(ガラス)にドープする方法の検討を行っていただきたいと考えている。

責任者

田中 清明 (名古屋産業科学研究所・上席研究員)

主要メンバー

藤沢 寿郎 (名産研研究部副研究部長)
富岡 秀雄 (名古屋産業科学研究所上席研究員)
水谷 宇一郎 (名古屋産業科学研究所上席研究員)
梅野 正義 (中部大学電子情報工学科客員教授・名古屋産業科学研究所上席研究員)
伊賀 文俊 (茨城大学理学部物理学科・教授)
竹中 康之 (北海道教育大学函館校・准教授)
籠宮 功 (名古屋工業大学工学研究科・准教授)
吉村 和記 (独立行政法人産業技術総合研究所サステナブルマテリアル研究部門環境応答機能薄膜研究グループ長)
鈴木 洋 ((株)TYK知的財産室室長)
野崎 哲 (鳴海製陶株式会社産業機材本部営業部商品開発課)
山嵜 悟 ((株)INAX総合技術研究所MOT推進部技術企画課課長)
坂野 仁美 (㈱明電舎基盤技術研究所開発企画部開発統括課)

その他

開催場所
名古屋市内(名古屋産業科学研究所他適宜)
実施形態
研究発表と意見交換の場として年2回実施
実施期間
平成25年4月1日~平成26年3月31日

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